また、ある時私は、師匠に「悟り」についてお尋ねしました。
「悟り」をインドの言葉で「ムクシャ」といいます。
「ムクシャ」とは「本当の自由」という意味です。
私は少年の頃から、悟りという言葉だけは知っていましたが、その真意については皆目わかりませんでした。
師匠に「悟りとはどういう状態ですか、どうすれば悟れますか」と尋ねましたところ、師匠は、次のように言われたのでした。
『何故そんなつまらんことを聞くのか。悟りがどんなものであるかを知りたかったら、草木や動物に教えてもらえ。
ちょうど良いことが行えることで、無理なく、無駄なく、無用のない、ちょうど良い状態だ。
ちょうど良い生存の知恵で生きているのが、植物であり動物だ。
人間の場合には、ちょうど良い生存の知恵と、心の知恵と、生活の知恵の三つを併せた状態が悟りなのだ。
だから木か、虫か、動物に聞いてみると良い。』
といわれました。
しかし、私が、なるほどこれが草木の悟りなのだな、と理解するにはそれから八ヶ月かかりました。
このような教え方が、ヨガの教え方なのです。
今申し上げたことでおわかりのことと思いますが、ヨガの研究者あるいは修行者は、己を空にして、とらわれることなく、ひっかかることなく、事実だけを真実として、体験を通じて把握するのです。
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