売り手と買い手が互いに損をしないよう将来の価格を決めておくシステムが先物取引です。
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先物取引はリスクを避けるために編み出された
先物取引はリスクが大きいから近づかないようにしているひとは多いでしょう。
確かに、顧客を食い物にする悪徳業者もいるから、うかつに手を出さないほうがいいでしょう。
しかし先物取引自体は、むしろリスクを避けるために編み出されたシステムなのです。
先物取引とは、簡単にいえば将来の価格を今決めてしまおうというものです。
キャベツ農家と食品スーパーを例にしてみましょう。
来シーズンのキャベツの収穫高は、天候によって大きく左右されます。
農家にとって怖いのは、キャベツが穫れ過ぎて値崩れする「農作貧乏」です。
そして、スーパーにとって怖いのは、不作で価格が暴騰し、品揃えに支障をきたすことです。
つまり、お互いに将来のキャベツ相場に対してリスクを抱えているということになります。
そこで、次の収穫期を待たずに、例えば1キロ200円で売買しようと農家とスーパーとの間で今のうちに決めてしますのです。
すると農家は将来の収入が、スーパーは将来の仕入れコストが確定できます。
お互いに将来のリスクを無くす(リスクヘッジをする)ことができるのです。
これが先物取引の効果です。
先物市場のしくみ
もう少し考えを進めてみましょう。
先物売りをしたい農家と先物買いをしたいスーパーは他にもたくさんあるでしょう。
それがバラバラに価格の交渉をするよりは、みんなで集まって交渉した方が効率的な価格形成ができます。
これが先物取引です。
先物市場には、安心して参加するための仕組みが必要です。
普通の市場(現物市場)では、売買が成立したらその場で売り手にはお金が入るし、買い手は現物を持ち帰ることができます。
先物取引ではその現物が無いから、現時点ではあくまで取引の契約が交わされるだけです。
しかし決済時点を前に片方が夜逃げしないという保証はない。
そこで通常は、先物取引をする人はしかるべき機関に保証金を積むなどの仕組みがとられています。
保証金さえ積めば、現物取引に関係のない人でも先物取引に参加できるので、これをギャンブルのようにとらえて一儲けを目論む相場師たちがいます。
農家やスーパーが先物市場を通じてリスクヘッジをするためには、一方にリスクをとってくれる相場師がいる方が、市場が効率化するという面があります。
先物取引は将来の価格変動のリスクを減らしたい人にも、リスクを冒して「勝てば大儲け、負ければ大損」といきたい人にも利用価値があるのです。
世界で最初の本格的な先物取引は日本で始まりました。
1730年に開設された大阪の堂島米会所のコメの先物取引がそれです。
戦前までの日本にはコメ先物を扱う市場が各地にあったが、1939年に戦時統制経済で廃止されました。
それが2011年の7月になって、コメの先物取引が試験的に認可されました。
取引は期待されたほど活発ではありませんが、その後試験期間の延長を繰り返して現在に至っています。
コメ先物を正式に上場しようとする動きもありましたが、投機に利用されるという政治家の反対で見送られたという経緯もあります。
きちんとした市場を作って自由で公式な取引が活性化すれば日本のコメ関連産業にとっては大きなプラスになると期待されています。
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