日本政府は農業保護に予算をつぎ込んできたが、方法が間違っていた。
目次
日本の食糧自給率はなぜ低いのか
比較生産費説が明らかにしているように、自由貿易によって各国が得意な分野に集中することが結果的にすべての国の利益になる。
農産物についても、当面の経済効果だけを考えるなら、貿易を自由化した方がいいに決まっている。
しかし、農産物は食糧だから、人間が日々生きていくのに決して欠かすことができない。
また、工業製品と違って、大量に安定的に生産することができない。
これから地球の人口はますます増加するが、肝心の農地はそれに見合って増えてはいない。
砂漠化などによる農地の消失も進んでいます。
食糧安全保障の観点からも、世界のほとんどの国が自国の農業を保護して食糧自給率の向上を図っています。
日本政府も長年にわたってかなりの予算をつぎ込んで農業を保護して自給率の引き上げを目指してきました。
ところが結果が全く伴っていません。
政府から保護された産業は、たいていはそれなりに発展することができます。
そしてうまい汁が吸えます。
つまり簡単に儲かるようになるのです。
例えば、旧大蔵省(現財務省)は銀行を、旧運輸省(現国土交通省)は航空旅客産業を、旧厚生省(現厚生労働省)は製薬産業を長らく保護してきました。
その間は一般国民は預金金利を低く抑えられ、高い航空運賃と薬代を払わされ続けて、一方でその業界の企業は莫大な利益を上げることができました。
現在では自由化が進んだおかげで航空運賃などは随分安くなりました。
銀行や航空会社は競争が激しくなって経営破綻したところもあります。
とことが日本の農業というと、保護の甲斐がなく肝心の食糧自給率は下がりっぱなしだし、農家もあまり儲かっていません。
多くの先進国は農業保護の甲斐あって自給率が向上し、農産物の輸出国になっているところもあるというのに、なぜ日本だけがこのざまなのでしょうか。
保護の仕方が間違っていたとしか考えられません。
貿易を自由化しつつ農業保障を
農業の保護と農家の保護はイコールではありません。
厳しいようだが、、農業は保護すべきだとしても、全ての農家を保護することは望ましくない。
これまで日本では、普段は勤め人をしながら余暇で農業をすすめるような兼業農家の方が保護の恩恵に欲していた面があります。
また、莫大な予算で農家よりも土木業者を保護するかのような農政が進められてきました。
そんな農政はやめて、十分な規模の主業農家が存分に創意と工夫を発揮できるような施策が必要です。
ただし、先進国が途上国に対して、工業やサービス業よりも農業が比較優位を持つことはほとんどあり得ません。
つまり、先進国の農家がどんなに頑張っても他の産業と同等の所得を得られる見込みは薄いのです。
今まで日本では農産物の輸入制限などで価格を高くすることで保護してきましたが、貿易はなるべく自由化して競争を促進し、きちんとした主業農家に所得補償をするという方法もあります。
その方が農業保護のために支出しているコストが透明になるというメリットがあります。
【2013年時点での食糧自給率】
日本39%
アメリカ130%
フランス127%
ドイツ95%
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