急を要しないのに救急車を使う人がいるために本当に必要な人に応じられない恐れがある。
無料だったり有料でも安すぎたりすると救急車不足になる。
目次
無料であることの問題点
救急車は日本では行政が無料で提供してくれるので、公共財だと思うかもしれない。
しかし、誰かが救急車を利用している間は他の人は利用できないし、その気になれば救急車の利用に対して料金を徴収できるので、厳密な意味では公共財には当たらない。
もちろん行政サービスとして無料で提供することが必要だという考えも根強いが、この無料制度は救急救命サービスの観点からも財政の観点からも問題視されています。
特に困るのは、緊急でもないのに救急車を呼びつける人がいることです。
日本では救急車は一回の出勤について少なくとも数万円の費用が掛かっていると計算されています。
タクシー代わり(タクシーは有料なのでむしろ救急車の方がお得だ)に使われてはたまったものではありません。
そんなことで出動していて、本当に重症の怪我人や急病人からの要請に応えられなくなる恐れが生じています。
この悩みは世界共通で、救急車の有料化に踏み切ったところもあります。
「本当に重症の人は無料、軽症の人は有料」とできればいいのだが、その線引きは案外と難しい。
東京都などは救急車を呼ぶべきかどうかの相談や代わりの移動手段の紹介のための電話窓口を設けています。
子どもの医療費無料化が招くこと
普通の商品サービスは、価格が安くなるほど需要がふえます。
無料ともなればなおさらで、需要が爆発的に増えることもあります。
政策的に何かを無料にするときには、そこを考慮しなくてはならない。
例えば、自治体によっては子供の医療費を無料にしているところがある。
子を持つ親にとってはとてもありがたい制度です。
ただし、それによって小児科を訪れる患者が増えることは覚悟しなくてはなりません。
重症の患者は有料だろうが無料だろうが病院にやってくるので、増える患者の大部分は軽症患者だと予測されます。
小児科医が足りていれば何とかなるが、今はどこでも小児科医が不足しています。
ただでさえ忙しいのに、有料なら来ないような軽症患者が待合室に埋もれると、重症患者が割を食ってしまうし、軽症患者を診てもあまり収入は増えない。
結果的に小児科医がますます過労に陥って、若い医学生が小児科医になるのを敬遠するようになり、小児科医不足がさらに進んでしまう可能性がある。
さて、もし救急車を一回当たりの有料にするなら、料金はいくらが適当でしょうか?
一回当たり数万円といわれるコストを丸ごと請求するのはいかにも厳しすぎます。
かといってあまりに安い料金にすると、かえって逆効果になる可能性があります。
現在でも、気軽に救急車を呼ぶのはごく一部の人であって、ほとんどの人はモラルを守っています。
これは素晴らしいことです。
ところが有料化されると、これまで敬遠していた人たちが堂々と救急車を呼ぶようになって、かえって混雑しないとも限りません。
料金設定には慎重な見極めが必要です。
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