保険とは保険会社と加入者との間の儲けのようなものです。
「モラル・リスク」が保険を崩壊させる。
目次
公正な取引と情報の関係
市場で公正な取引が行われるためには、取引される商品の性能や品質などについて、売り手と買い手がともに完全な情報を有していることが条件となります。
ところが現実には、肝心な情報を売り手か買い手のいずれかだけが握っていることが少なくありません。
情報を持っている方が取引相手に正直に教えてあげればよさそうなものだが、市場の参加者がみな正直者とは限りません。
相手をだまし、不当な利益を得ようとする人が出てくるものです。
たいていの商品では、情報は売り手に片寄っています。
その商品に不利な情報、例えば不良品であるとか、まったくの不人気商品であるとかいう情報は、売り手はよく知っているが買い手は知らないことが多いです。
不心得な売り手はそれを利用して無知な客に売りつけることがあります。
もちろん腰を落ち着けて商売をしようとする人は、滅多にそんなことはしません。
客の信用を失ってしまうからです。
逆に買い手に情報が片寄っている商品も存在します。
それが保険です。
保険という商品に関する知識については、他の商品と同様に売り手である保険会社の方がたくさん持っています。
そうではなくて、保険を買う人の情報です。
保険が成り立たない危険
その人の健康状態がどうか、自殺を考えているかどうか、自動車の運転が無謀かどうかなどはとても重要な情報だが、保険会社よりもずっと、保険の買い手である本人がよく知っています。
したがって、ほうっておくと、事故の危険の高い人が大勢、保険を買いにやってきてしまう。
すると保険金の支払いが増えてしまうので、保険会社は掛け金を引き上げて帳尻を合わせようとします。
保険金がたかくなると、心身ともに健康で安全運転の人が保険に入ってくれなくなり、最後には保険そのものが成り立たなくなるのです。
真実を偽って不当に保険から利益を得ようとして保険に加入しようとすることを「モラル・リスク」といいます。
モラル・リスクを防ぐためには、保険会社は危険の高い人をしっかりと見極め、加入を断るか、その人に対しては掛け金を高くしなければなりません。
理想をいえば、危険がひとりひとり異なるのだから、掛け金もそれに応じて細かく分けるべきです。
昔は技術とコストの面での難しさと、政府による規制のため、自由な保険設計ができなかったが、近年は自由化が進んで保険にバラエティが出てきました。
自動車の運転をコンピューターでモニターして安全運転の人には保険料を安くして運転が乱暴な人の保険料は高くすることも可能になってきています。
ただし自由化されていろいろな保険が出てくると、加入者の側が勉強して、どれば自分に向いた保険かを見極めなければならない。
テレビなどでは「無審査で入れる」「高年齢でも入れる」という保険が盛んに宣伝されているが、そういう保険はリスクの高い人が加入してくることを見越して保険料が高めに設定されているのが普通です。
健康な人は審査のある保険の方が得なことが多いです。
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