開発途上国の製品を高めの価格で買う「フェアトレード」だが、競争を歪めてしまったら逆効果です。
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途上国のためになるか?
売り手はなるべく高く売ろうとして、買い手はなるべく安く買おうとする。
それが結果的に効率性をもたらすというのが経済原則です。
近年、「フェアトレード」(公正な取引)」を主張する人がいます。
「先進国は開発途上国の農産物や工業製品を不当に安く買い叩いています。
もっと高く適正な価格で買ってあげるべきです。
もともと途上国の商品はとても安いから、今よりも多少高く買ってあげても先進国側の負担増はごくわずかです。
それによって開発途上国が経済発展するならいいことではないか。」
という主張です。
自由競争で形成された価格よりも高い価格であえて買おうというのだから、経済原則には反しています。
けれども途上国の発展のためならコーヒー一杯が10円くらい高くなってもいいかと思う人は多いでしょう。
実は先進国のコーヒー店の一杯のコーヒーの価格に占めるコーヒー豆原産国からの買い付けコストはごくわずかなので、相当高く買ってあげても10円にはならないのですが、それは別の話なのです。
不平等が生まれることも
開発途上国のためを思うのはとてもいいことですが、市場価格よりも高く買おうとすると資源配分が歪められる恐れがあります。
コーヒー豆のフェアトレードを思い立った先進国の業者がどうやってそれを実行するかというと、例えばどこかのコーヒー農園と市場価格よりも高く買う契約をすることになります。
その農園は大喜びだが、それでせっせと他の農園よりもいいコーヒー豆を作ってくれるかというと、そうとは限りません。
契約した以上は品質の悪い豆でも買ってくれるので、むしろ手抜きの誘惑にかられてしまいます。
一方で、フェアトレードの契約をしてもらえなかったコーヒー農園は、どんなに頑張って品質のいいコーヒー豆を生産しても高くは買ってもらえません。
だとすると、これは不平等ではないでしょうか。
確かにコーヒー豆は産地ではびっくりするほど安く取引されていますが、それはなぜかというと、コーヒー豆は典型的な開発途上国の農産品だからです。
先進国で国内にコーヒー農園がある国はまずないので、先進国が国内業者の保護のために高い関税をかけたりして輸入を規制する心配はありません。
またコーヒー豆は適当な気候さえあれば栽培するのは割と簡単なので、新規参入が容易です。
つまり、少しでもコーヒーの価格が高くなるとあちこちで生産が増えて、その結果、すぐに安値に戻ってしまうのです。
コーヒー栽培はそもそも、どうしてもそんなには儲からない産業なのです。
開発途上国の経済発展を支援するなら、別の方法をとった方がいいかもしれません。
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