ヨーロッパはかつて、世界経済をリードしていたが、二度にわたる大戦を経て地盤沈下が進んでしまった。
協力して経済を立て直すべく、1952年にドイツやフランスなど6か国が欧州石炭鉄鋼共同体(ECSC)をくつった。
それから地道に拡大を遂げ1993年には「ひとつのヨーロッパ」の掛け声の下にEU(欧州連合)が結成された。
加盟国内では人の移動や商売上の取引が原則として自由にできる。
加盟国数は現在のところ28か国で、巨大な経済圏となっています。
経済統合の象徴とし導入されたのが共通通貨のユーロです。
自国通貨を廃して法定通貨をユーロに切り替えた国は19か国にのぼります。
ユーロ内ではドイツなどの経済強国とギリシャやポルトガル、、アイルランドなどの弱者が混在しています。
特にギリシャの債務危機はユーロ圏各国の経済に脅威を及ぼしました。
ギリシャ政府は公共事業や公務員の給料に気前よく支出する一方で国民の受けを狙って増税を回避してきました。
巨額の赤字を隠していたのだから始末が悪いです。
税収の不足分は国債を発行して賄ってきましたが、国債を償還できないデフォルトの危機に何度も陥っていました。
ユーロ圏以外の国の政府は、基本的に通貨の発行権を持っています。
国債を自国通貨で発行している限りはデフォルトの危険は少ない。
しかし、ギリシャはユーロに参加して通貨の発行権を失ってしまった。
自国の都合で通貨の発行量や金利などを動かすことができません。
政府の支出を減らして増税するくらいしか打つ手がないのです。
国民にとっては厳しいところです。
経済が順調なユーロ各国にも火の粉は及ぶ。
ギリシャの国債を保有していた海外の金融機関や個人は大損です。
特にヨーロッパにはギリシャ国債を大量に買っている大銀行がいくつもあります。
大銀行が経営に行き詰まると、その国の経済も危機に陥りかねないのです。
世の中では、ギリシャばかりが悪く言われますが、借金は借りてだけの責任ではありません。
ドイツ国民は、自分たちはまじめに経済運営をしているのにギリシャの放漫財政のツケを払わされると不満たらたらだが、支払いや借金返済の余力が乏しいギリシャにドイツのメーカーがいろいろ売り込み、またドイツの銀行が大金を貸し込んだ責任も幾分かは問われざるをえない。
EU内のごたごたは他にもある。
2016年6月にイギリスでEUからの離脱の賛否を問う国民投票が行われました。
結果は離脱を支持する票がぎりぎり過半数を占めました。
いわゆる「ブレグジット」です。
投票結果に従ってイギリス政府は2017年3月にEUに正式に離脱を通告しました。
離脱のためのEUとの交渉期間は2年間となっています。
離脱を支持する投票をした人の理由は、自分たちが払った税金が経済の弱い国に吸い取られていくことや、経済の弱い国から人が押し寄せて社会保障などの支出が膨らんだことへの不満があります。
それに対して離脱に反対投票した人は、難民の人権擁護や移民が働くことによる経済活性化などを重視しています。
予定通りに離脱できるかどうか、混迷が続いています。
イギリスに限らず、EUの官僚制への反発も根強い。
EUの政策を仕切っている官僚は、首をかしげるような規制を押し付けてくるのです。
例えば、2014年9月から、二酸化炭素排出量の削減のためとして消費電力が1600ワット以上のハイパワー掃除機の販売が禁止されました。
そこで、規制発効まえにはハイパワー掃除機の駆け込み購入が相次ぎました。
そもそも電力消費はトータルで考えなくてはなりません。
パワーの落ちる掃除機を長時間動かせば電力消費はかえって増えてしますかもしれません。
EU域内で売っていい野菜の形やサイズを細かく規制していた時期もありました。
EUの理念は崇高だが、現実はなかなか厳しいものです。
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