電力の独占は原発推進も招いた。
電力自由化のメリットとリスクは?
目次
なぜ原子力発電が推進されたのか?
東京電力福島第一原子力発電所の事故で莫大な被害がもたらされました。
周辺地域の旧住民の多くが今でも帰宅できずに困難な生活を送っています。
こんなことになってあらためて「国土が狭くて地震や津波がしばしば襲ってくる日本で、なぜこんなにたくさんの原子力発電所が建設されてきたのだろうか?」と疑問を抱いた人も多いでしょう。
電力会社は、「火力や水力などに比べて原発はコストが安い」と繰り返してきたが、「核廃棄物の処理費用を加えればむしろコストは高い」とか、「大事故が起こったら計り知れない損害が出る」という批判は昔からあった。
そんな批判を無視してここまでやみくもに原子力発電を推進してきたのはなぜだろう。
世の中の動きを考えるときに経済学的な思考が役立つことは多いが、特に効果的なのは、「これで誰が儲かるのか」を考えることだ。
電力会社が強力に原発を推進したのは、それが大変儲かったことが理由のひとつと考えられる。
日本の電力会社は地域独占が認められていた。
競争が無いし、電気の変わりはなかなかないから、電力料金はかなり高く設定できる。
日本の電力料金は「総括原価方式」といって、発電や送電にかかたコストに一定の比率で利益を上乗せして、その総額を回収できるだけの料金を設定していいことになっていた。
市場で競争している企業なら、できるだけコストを切り詰めようとするものだが、総括原価方式ではコストをかければかけるほど利益が増えるのだ。
だから、建設などに莫大なコストがかかる原子力発電は電力会社には好都合だったのだ。
新規参入と料金が自由化される
近年ようやく日本でも電力の自由化が進んできた。
大口需要者への電力小売りは以前から徐々に自由化が進められていたが、ついに2016年4月には電気の小売業への参入が全面自由化された。
家庭や商店を含む全ての消費者が、電力会社や料金メニューを自由に選択できるようになったのだ。
太陽光や風力、水力、、地熱などの再生可能エネルギーによる電気だけで暮らしたいという人は、そういう業者が現れればそこから買うことができる。
あなたが自宅や庭にソーラーパネルを設置して発電して余った電気をよそに売りたいのなら、それも可能だ。
ただし電力小売業者として登録する必要がある。
小売りにおける総括原価方式も原則的に廃止されたので、これから価格競争により電力料金が下がることも期待される。
ただし現状では、新規事業者のシェアが急激に伸びているわけではない。
完全自由化から2年が経過した2018年3月末時点で、新電力に契約先を切替えた世帯は10%を超えたが、もっと競争が促進されることが望まれるところだ。
【ポイント】
原発をつくればつくるほど利益が増える。
発電や送電にかかたコストに一定の比率で利益を上乗せして
その総額を回収できるだけの料金を設定していいことになっている。
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