閉店時刻直前の魚屋さんが値下げする理由とホテルが料金を下げる理由は同じ。
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生ものの価格は変わる
ひとつの商品の需要と供給のバランスは、いつでも安定しているわけではない。
一度そのバランスが崩れてしまうと、商品の価格も変わる。
魚屋さんとホテルというと、まるで違う商売に見えるが、実は扱っている商品にひとつの共通点がある。
魚屋さんは魚、ホテルは客室を売っているが、これは両方とも「生もの」だと言えるのです。
魚屋さんは仕入れた魚を早く売り切ってしまわなければ腐ってしまう。
腐った魚に対しての需要はゼロだから、売り物にならない。
売れ残ると仕入れにかかったコストが丸ごと損になってしまうので、どんなに値引きしてでも腐る前に売った方がいくらかお金が入るだけマシなのです。
だから閉店時刻間際になると、どんどん値引きすることになるのです。
ホテルの客室は文字通りの意味で腐るということはないが、実は客室は魚よりもずっと「生もの度」が高い。
それは「今日の部屋を明日売ることはできない」からです。
ホテルを経営するコストを日割りで分割すれば、200室の客室を持つホテルは、毎日200室の客室を仕入れていると考えることができる。
魚屋さんが、毎日200匹の魚を仕入れているのと同じことです。
この200室はその日のうちにお客に売ってしまわなければ損をすることになります。
次の日に売るのはまた別の200室なのだから、その日のうちにお客が泊まらなかった部屋は、腐った魚と同じことになります。
魚屋さんなら、「今日はあまり客が来ないだろう」と予想したら、仕入れを減らすことができます。
それに冷蔵庫や冷凍庫などの保存技術も発達したから、昔に比べれば魚の鮮度を保つことも容易になりました。
ホテルの部屋は減らせない
ところが、ホテルは「今日は客が来ないだろうから部屋を減らそう」というわけにはいかない。
一度ホテルを建てたら、毎日、同じ数の客室を仕入れ続けなければならないからです。
魚とは違い建物なので、日によって仕入れる数を変えることはできないし、売れ残った部屋を冷蔵庫にしまって保存することもできない。
多くのホテルが、正規の宿泊料金を支払う客だけでは客室が埋まらないために、早い段階から値引きをしているのです。
夜遅く、つまり空いている部屋が腐る寸前に、予約なしで泊まりに来てくれた客に割引するホテルもあります。
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